暮らしも、まちも、もっと盛り上げる。
小高商工会青年部と考える、”小高らしい”賑わい。

暮らしも、まちも、もっと盛り上げる。<br>小高商工会青年部と考える、”小高らしい”賑わい。

地域の商工会が、どんな活動をしているかご存知ですか?商工会は、その地域の商工業者が集まるひとつのチーム。その中で、特に若手の経営者や事業者の育成と交流を目指して構成されているのが、商工会青年部です。今回は、小高区の商工会青年部のみなさまにお集まりいただき、日ごろの活動から、小高の将来に抱くビジョンなどについてインタビュー。小高に賑わいをつくりだす、みなさまの思いを伺いました。

地元の住民も、移住経験者も。広げたい、青年部の輪。

インタビューの会場となったのは、小高商工会館に隣接した小高浮舟ふれあい広場。この日お集まりいただいたのは、小高出身の3人、小高への移住経験者3人の、6人です。

——本日はお集まりいただきありがとうございます。まずは、お一人ずつ自己紹介をお願いできますか?

玉川さん 小高商工会青年部の部長を務めております、玉川と申します。生まれも育ちも小高で、株式会社玉川建設という土木工事の会社を経営しています。創業は私の祖父の代で、聞くところによると小高区で一番古い建設会社のようです。

みなさん ええ、そうなんだ!

青年部長の玉川さん。「おだかるの過去の記事を読み、特に地元消防団の記事に青年部との共通点を感じた」と語ります

玉川さん 青年部に入ったきっかけは、小高で働く先輩から誘ってもらったことでした。2013年頃だったと思います。

渡部さん 玉川さんと同級生の渡部です。同じく生まれも育ちも小高で、土地の測量だったり、登記に関わる仕事をしています。

玉川さん 青年部への入部のきっかけは、数年前、僕と渡部さんが同級生の忘年会で、お互いに地元で仕事をしていると話をしたことだったよね?

玉川さんが渡部さん(写真右)の紹介をするなど、お二人の仲の良さが伺える場面も

渡部さん そうそう。中学校を卒業してからそれまで、あまり接点はなかったけれど。僕の青年部への入部のタイミングは、わりと最近になってからですね。

山崎さん 自営業で鉄工所を営んでいる、山崎です。自分も祖父の代からの3代目として、小高で営業を続けてきました。青年部に入ったきっかけは、やっぱり先輩の紹介でしたね。自営業をしていると、いろんな付き合いがあるので。

入部前は、「商工会や青年部がどんな活動しているかよくわからなかった」と語る山崎さん

——ありがとうございます。みなさん、周りの方からのお声がけで入部することが多いのですね。では続いて、移住経験者のみなさま、お願いします。

神さん 小高で馬にまつわるサービスにいろいろと取り組んでいる、神です。いろんな方が、馬と楽しめるようになることを目指して活動しています。僕自身は、3年前から相馬野馬追に小高郷から出陣をさせていただいたりもしていて。

——青年部に入ったきっかけはなんでしたか?

神さん 山崎さんと、別の仕事について話した時に、誘ってもらったことがきっかけでした。2024年の夏頃でしたね。

会社で使う馬用のジャンプ台の制作を、山崎さんにお願いしたこともあるという神さん

西山さん デザインの仕事をしています、西山です。出身は福島県富岡町です。2022年頃、私が主宰している「おだかつながる市」というイベントを青年部にお手伝いしてもらったことが、青年部と接点ができたきっかけだったかな…?

山崎さん イベントに向けて、備品や許可証の準備をするためだったよね。そのころにはもう、入部していたんじゃない?

西山さん そうだったかな…?実は、明確にこのとき入部した!というタイミングがあまり無いかもしれないです(笑)。

佐藤さん その西山さんから声をかけてもらって青年部に入りました、佐藤です。haccobaという酒蔵を営んでいます。入部の時期は、神くんと同じ2024年の夏頃だったと思います。

移住後4年ほど経って青年部に入部した佐藤さん(左)と「気が付いたら入部していた」と語る西山さん(右)

青年部の解釈やルールは、柔軟に変えていきたい。

——経歴も、普段のお仕事も、さまざまな方がいる青年部ですが、所属するための決まりや資格はあるのでしょうか?

玉川さん 小高商工会の決まりに倣い、「経営者である」、または「経営者の跡継ぎである」、「小高で起業を考えている」という方が入部することができます。あとは、その方たちの活動に賛同される方、でしょうか。

山崎さん 年齢としては、青年部は45歳で卒業です。

——入りたいと思った方全員が、入れるわけではないのですね?

山崎さん 事業をやっているということが大切かな。青年部はもともと、事業をやっている家の跡継ぎが入れるというところでした。でも今となっては、この土地はそういう仕組みだけにしておくわけにもいかないじゃない?

現在の青年部の部員は、40代前後と30代前半が中心。近い将来、一気に部員が減ってしまうタイミングがくると語る渡部さん

渡部さん そう思います。跡継ぎの人が、他の地域へ行ってしまったりするケースもあるし。

山崎さん そうそう。だから、これまでの括りを取っ払って、仲間をもっと増やしていくために、青年部という組織の制限や解釈は、自分たちで広げていくべきなのかな、と僕は思っています。

玉川さん 青年部の活動としては、親会である小高商工会のお手伝いや、小高の毎年の行事のお手伝いをしていくことが基本ですね。

——継承する活動がベースにありながら、みなさんご自身が青年部としてやりたいと思うことも、新しく加えていくこともできるのですか?

玉川さん そうですね。ここにいるメンバーたちでは、活動歴に差があるので、自分たちがどんなことをしたいか、これからもっと協議していきたいですね。

地域の催しに一致団結。いつのまにかつながる青年部。

——では、移住経験者のみなさまにとっては、入部する前の小高商工会青年部は、どういった印象だったでしょうか?

神さん 地域の先輩方が活動されている組織だな、という印象でした。僕の場合は、野馬追や秋祭りの時など、地域のイベントで玉川さんや山崎さんと顔を合わせる機会が結構あって。わざわざ青年部という枠組みを意識したことは、実は無かったかも。

佐藤さん 僕は、「青年部で祭りをやっている」ということを知っていたくらいです。

山崎さん 祭りを主催できるんですよ。

みなさん そうなんだ…!(笑)。

以前haccobaが秋祭りで実施した「大蛇巻き(巨大海苔巻きづくり)イベント」も昔、小高で行われた催しだったそう

佐藤さん 小高区内の寿司屋の大将とか、以前青年部に入っていた方たちから「昔はこんなことをやってたんだ」って話を武勇伝のように教えてもらって。それがきっかけで、青年部の活動に興味を持ちましたね。

西山さん 私は正直、お祭りとか地域の行事の準備が大変そうだな、という印象を持っていました。

山崎さん やっぱり、その印象はあるよね(笑)。

西山さん うん。ただ、移住してきた人たちのコミュニティの中でも、商工会青年部のつながりや活動があるっていう話は以前から聞いてはいました。

「青年部の方たちはみんな祭りやイベントに慣れていて、自分自身も相談しやすかった」と西山さん

「小高に根を張る」意思を示す。

——では、みなさん実際に青年部に入ってみて、入る前の印象はどう変化したでしょうか?

西山さん アクセスできる人の幅が広がったと感じますね。「おだかつながる市」を青年部のみなさんに手伝ってもらったときも、もう頼もしいこと、頼もしいこと。

——アクセスできる人の幅、ですか?

西山さん 「あれが足りない」「この機械が動かない」となったときに、「これはあの人が持っているよ!」と近場で解決できるんです。私たちは移住してきて、関わる人の範囲が限られる中で、青年部と一緒に活動をするとその幅がまた広がるというか。すごくありがたいです。

玉川さん なにか催しを計画する時に、モノや場所の準備がわりとスムーズに進むと思います。結局その持ち主も、青年部や商工会に所属していることが多いですし。そこは、心強い面ですね。

神さん 僕は、青年部に入ってみて、小高に住む人とお話できる話題が増えたと思います。「商工会青年部」という枠があって、まちのいろんな情報をアナウンスしてもらえるのは良いですよね。

——入部したことで、このコミュニティだからこそ知れる情報があるのですね。

神さん そう。そして情報だけじゃなくて、自分と関わってくださる方が増えることも嬉しいなと思います。

西山さん 今日のこのメンバーにも同年代の人が多いこともあって、限りなく地元の友達に近い雰囲気も感じています。たとえば、私が所属している起業を目指す別のコミュニティとは、また違った居心地の良さがあるというか。

佐藤さん 僕の場合は、移住してきて5年ほど経つのですが、どこから移住者じゃなくなるのか?と考えることがあって。青年部に入ったのは「小高に根を張る」という意思表明のひとつでもあるんです。

青年部への入部を通して、自分の思いを周りの人に伝えることもできたという佐藤さん

——地域の方たちに向けての表明、ですか?

佐藤さん 地域の方たちに向けても、自分に対してもです。小高のお年寄りたちに「青年部に入っている」と話をすると、なんだか喜んでくれる。それにどんな意味が?と言われると難しいけど、意味はあると思います。

玉川さん 地域の方が喜んでくれる、というのはこれまでの青年部がまちとの信頼関係を築いてこられたことも、理由のひとつじゃないでしょうか。そういった部分を、これからもつないでいきたいと思います。

小高をもっと「まちらしく」していく、青年部のこれから。

玉川さんから、まちと青年部との信頼関係を育みつづけたい、というお話が出たところで、青年部に所属するみなさんは活動に対してどんなビジョンをお持ちなのか、それぞれの展望を伺いました。

神さん 僕は、仕事が馬を扱うかなり変わった分野なので、仕事でも暮らしにおいても、みなさんとつながって仲間が増えていくと嬉しいです。

仕事も暮らしも生きていくための手段として、あまり境界線を設けずに人との関わりを増やしたいと語る神さん

山崎さん みんなで、何かができればいいよね。小高って「一度ゼロになったまち」と言われることがあるじゃないですか。でも、本当にゼロになってしまったら、まちはもうまちじゃない。

——たしかにそうですね。小高がこれからもまちとして続いていくために、どんな事が必要でしょうか?

山崎さん まちって、みんな、誰かにとって足りないものを補い合おうとして、できていく気がします。自分に何ができるか、誰かの役に立てることを考えて、商売や営みが生まれていったと思う。だから、こうして移住して、商売を始めようとしてくれる人がいるっていうのは、小高にとってすごく嬉しいことです。

「まちのPRやみんなのためになることに、より進んで取り組みたい」と語る山崎さん

山崎さん そこに、我々が手助けしたり、支えられたりすることがあればさらに嬉しい。ひとりの個人としても、青年部の組織としても。誰かや小高のまちを盛り上げる一助になれればと思います。

西山さん 山崎さんの言う、「支える」ということもそうだけど、私としてはもともと小高で会社を続けてきた方たちや、これまで続いてきた地域のなりわいそのものが、すごいことだと思う。だから、そういう側面も青年部から発信できればいいなと思います。

「楽しんでいる自分たちの姿を見て、同じ気持ちの人が集まってきてくれれば」と西山さん

西山さん あとは、「まちのために」という思いはもちろんあるけど、まずは、私たちや青年部、地域の若い人たちが、楽しんで暮らしていることが、大事なんじゃないかな。だから自分が楽しいと感じられるように暮らすことも大切にしたいですね。

佐藤さん そのためにも、やっぱり「祭り」じゃないかな。僕、こう見えて祭り好きで。

みなさん こう見えて?(笑)。

「祭りは、みんなで一体感を持って頑張れるイベント。ちょっとしんどいくらいが楽しい」と佐藤さん

佐藤さん 新しいお祭りを企画するだけじゃなくて、いまあるお祭りもより楽しくしていきたいですね。そういう楽しいことをしている人の姿があると、もう引退した気分になっている地域のおじいちゃん、おばあちゃんたちも「なんか楽しそうだな」と感じてくれると思うし。関わりが増えていくと思うんですよね。

——たしかに、地域の方たちみんなと盛り上がるって大切ですよね。みなさん、それぞれやりたいことを思い描いているようですね。

玉川さん いろんなアイディアがある中で、やっぱり商工会青年部は、移住を経験した方と、もともと地元で暮らしてきた方とのつなぎ役にもなりたいと思っています。小高での暮らしも、住みやすく、働きやすくなるように支えたいです。もちろん青年部のチームとしても、商業活動を支えたいですし。

山崎さん 神くんが言ったように、やっぱり、仲間はたくさんいた方がいい。そのために、入部の制限や活動の決まりなども含めて、より柔軟な組織にしていけたらいいな、と思います。

玉川さん あとは…私個人的になんですけど、小高の特産品を青年部主体でつくりたいです。

みなさん おお~! 

山崎さん いまって、どんな特産品があったんだっけ?唐辛子とか?

西山さん お菓子の「浮城」とか?

玉川さん そうですね、で、もう少しなにかあってもいいかなって。他の地域の事例で言うと、北海道の商工会青年部って観光物産品の商品開発が盛んなんです。それをモデルに、この地域も青年部のみなさんで一緒になにかつくりたい!と思っています。

玉川さんのアイディアをきっかけに、みなさんからもいろいろな話題が飛び出します。

——佐藤さんが言っていた、祭りともつながりそうですね!

玉川さん そう、たとえば酒造りができるとしたら、そのお酒に合うアテをつくって、それをみんなで飲んで楽しめるような祭りをつくって、みたいに。

みなさん おお!

山崎さん いいストーリーが出来上がってる(笑)。

早速、玉川さんから柔軟なアイディアが。先代の部員の方々から今日に至るまで、小高の地域と育んできた信頼関係を大切に引き継ぎながら、さらに魅力的な場所へ進化させることを目指す小高商工会青年部。小高商工会青年部をはじめ小高区に住む様々な世代や背景を持った人たちが混ざり合い、化学変化を起こしながら小高のまちや祭りを進化させ次へつないでいく。

小高が持つ無限の可能性を感じる座談会になりました。みなさん、本当にありがとうございました。