来てみたから、わかることだらけ。
“おだかぐらし”のイメージ膨らむまちあるき、
そして「地域のお世話人」との出会い。

来てみたから、わかることだらけ。<br>“おだかぐらし”のイメージ膨らむまちあるき、<br>そして「地域のお世話人」との出会い。

小高区には、移住を検討中の方や、すでに移住をした方の移住前後の不安や疑問などを解消する「地域のお世話人」(※)という制度があります。小高区で暮らしたり、働いたりする住民の方が、移住に関わる不安や疑問に答えるという仕組みで、住民目線のリアルな声が聞けるチャンスです。今回は、そのお世話人制度に、東京に暮らすご夫妻から申し込みが。どんな方が小高区への移住を検討していて、実際にまちを訪れることでどんな収穫があったのでしょうか。小高区で過ごす1日に密着しました。

※地域のお世話人制度…移住前後の不安や疑問などに小高区で暮らす・働く住民の方が答える仕組み。

https://www.city.minamisoma.lg.jp/portal/sections/21/2110/odaka_gurashi/chiikinoosewanin/15746.html

初めての小高区。
地域のお世話人との出会い。

浜通りらしく気持ちのいい青空が広がった、11月半ばのある日。待ち合わせ場所は、小高区の中心部にある食事処「叶や」です。お昼時のピークを過ぎた13時でも、お店は近所で働く人たちを中心に、ランチのお客さんで賑わいます。

以前は宿でもあったという「叶や」。お昼時のお店周辺には美味しそうな香りが漂っています

約束の時間より少し前、今回「地域のお世話人制度」を利用される、河西(かわにし)さんご夫妻が到着しました。

——はじめまして、今日はよろしくお願いします。

昭二さん・澄江さん はじめまして、よろしくお願いします。

東京から、初めて小高区を訪れた河西さんご夫妻。昭二さん(左)と澄江さん(右)

——今回、河西さんご夫妻はどうして「地域のお世話人制度」を利用することになったのか教えていただけますか?

昭二さん わたしたちは、移住先となるまちを探している最中なんですが、移住先では飲食店をやりたいと考えていて。以前から、南相馬市の「よりみち」(※)に移住相談をしていて、今回「地域のお世話人制度」を教えてもらったんです。

※よりみち…みなみそうま移住相談窓口。移住に関わる相談を受け付けたり、地域の方と移住者・移住検討者との交流の場づくりを行ったりしている。 https://minamisoma-yorimichi.jp/

今回「よりみち」で河西さんご夫妻を担当しているのが…

小南さん 河西さんご夫妻の小高区への滞在をサポートする、「よりみち」の小南(こみなみ)です。よろしくお願いします。

小南さんは訪問する先々で、河西さんと地域の方々お互いを紹介し話しやすい空気を作ってくれます

昭二さんはこれまで、飲食業界で25年間、さまざまなジャンルのお店で経験を積んできたそうです。

——河西さんご夫妻にとって小高区は、移住先の候補地のひとつ、ということなんですね。

澄江さん 将来的に福島県の浜通り地域のどこかに移住したいと考えていて、いくつかの地域を実際に見てまわっているところです。

そして、今回の「地域のお世話人」は…

牧野さん 今日はよろしくお願いします。まずは、お店のお昼の営業を頑張りますよ!

今回、河西さんご夫妻の「地域のお世話人」を務める牧野さん。

牧野さんは、食事処「叶や」の店主兼料理長でもあります。ランチタイムが落ち着くまでは、ひとまず厨房でのお仕事に。河西さんご夫妻も、ランチをいただくことにしました。

人気の月替わり定食「エビとカキのフライ」。お店では南相馬市や福島県沿岸の食材をよく使用するそう

昭二さん いただきます!この辺りでは、どんなお魚が獲れるんですか?

小南さん 南相馬市沿岸では、ヒラメやカレイなどが獲れますね。メニューにもあったイトヨリダイなども。

叶やのランチに舌鼓。「普段ランチはどこで食べますか?」と昭二さんから質問も

まるでフィールドワーク。
まちあるきへ、いざ出発。

お昼を食べ終えた一行は、牧野さんがお店の営業を終えるまでまちあるきへ。
まず訪れたのは小高区役所。おだかぐらしの情報が集まる場所であり、昭二さん・澄江さんともに、熱心に区役所の職員と話したり、パンフレットをチェックしたりしました。

そしてここからは、小高区役所の移住定住相談窓口でもある“おだかぐらし”担当の佐藤さんも合流。4人が区役所を出て向かったのは、小高区の駅前通り。いつも通りの落ち着いた雰囲気です。

地域内のおススメスポットを紹介しながら、河西さんご夫妻の東京での暮らし方もヒアリング

まちあるきでは、歩いてみて気になった場所に飛び入りで入ってみることも。お二人が気になったのは、セレクトショップ「KIRA」。中に入ると、店主の平岡さんが出迎えてくれました。

店内の南相馬市をはじめ福島県内の特産品、KIRAセレクトの商品をきっかけに会話が広がる

平岡さん いらっしゃいませ。

昭二さん はじめまして。実は、わたしたち移住先で飲食店を経営したいと考えていて。それにいい場所や店舗物件、自分たちが暮らす住宅などを探しに来たんです。

平岡さん 飲食店ですか。どんなお店を考えているんですか?

昭二さん うどんかラーメンかと思っています。ただ、特に決めていなくて。

平岡さん 近くのエリアに、飲食店の店舗にちょうどいい物件を知っている人がいるかもしれないんですけど、会って話してみますか?

昭二さん え、ぜひ!いいんですか?

平岡さん いま、電話で確認してみますね。

なんと平岡さんが、早速連絡を取ってくれることに。急展開で話が進み、昭二さんもやや驚いています。

平岡さん 今日の夕方であれば、時間が空いているようですよ。よかったら一度会ってみてください。

実際に現地を訪れ、地元の人と一緒に歩くことで、新しい出会いがあったり、欲しい情報にアクセスできたり。実際に現地を訪れてみるからこそ、得られる収穫があるそうです。

KIRAを後にした河西さんたちは、気になったことを質問しながらまちの雰囲気を確かめます。

昭二さん 真冬の時期って、どのくらい雪が積もるんですか?

小南さん 浜通り地域はほとんど積もりませんね。降っても、すぐに溶けてしまいますし、晴れる日も多いです。

澄江さん 復興住宅とかもあるんですよね。

佐藤さん そうですね。移住者の方は、貸家の物件のほか、空き家バンクに登録している住宅を改修して住まわれる方もいらっしゃいますよ。

そうしてまちあるきを続けながらやってきたのは「小高工房」。小高区の特産として売り出している「小高とうがらし」を使った商品などが売られているお店です。扉を開けて声を掛けてみると、店主の廣畑さんがいらっしゃいました。

小南さん こんにちは。今日は東京から来てくださった河西さんご夫妻にまちを案内しているんです。ちょっと、お店を見せてください。

廣畑さん 南相馬に来ていただいて、ありがとうございます。よかったら小高とうがらしを使った商品、ちょっと食べてみて!

柚子胡椒風味の小高一味を味見させてくれた廣畑さん。「はい手を出してください!」

昭二さん ありがとうございます!柚子の香りが良い、そして辛い!

澄江さん 美味しい!けど、ピリッとしますね!

小南さん お二人は、移住先の地域で飲食店を経営したいと考えていらっしゃるんです。小高区にも、お店が増えたらいいですよね。

廣畑さん どんなお店を考えていらっしゃるんですか?

昭二さん 今は、うどんかラーメンのお店で考えています。

廣畑さん 小高区はもともと13,000人くらいしか住民がいない地域なのに、昔はラーメン屋さんが5~6軒あってね。このまちの人たちはラーメンが好きなんです。だからお店ができたら嬉しいです。

小南さん 楽しみですよね!廣畑さん、ありがとうございました。

廣畑さん 辛くてごめんなさいね(笑)!ありがとうございます。ぜひまた来てください。

廣畑さんからのホットなおもてなしをいただいた一行は、小高区の中心エリアを一周し、スタート地点の叶やに戻ってきました。

——思いがけず、いろいろな方との会話やつながりが生まれましたね。

昭二さん こうして、担当者の方と一緒に歩けて良かったです。もしも自分たち夫婦二人だけで歩いていたら、こんなに人と話せなかったと思いますし、なにより、人目も気になっていたと思います(笑)。

「飲食店オープンの夢」に向けて。
生の声を聞いてみる。

叶やでは、お昼の営業を終えた牧野さんが待っていてくれました。ここからは、地域のお世話人である牧野さんに「このまちで飲食店を営む」ことについてざっくばらんに聞く時間に。

佐藤さん、小南さんも参加し、会話がスムーズに進むようにサポート

小南さん まずは、ランチの定食、とっても美味しかったです!牧野さんは、もともと小高のご出身なんですよね。

牧野さん そうです。震災後も地元の小高区が落ち着くし良いということで、避難先から戻ってきて妻とお店を続けています。

昭二さん 今日は、自分たちのほかにも2~3組程のお客さんがランチに来ているようでしたが、いつもこれくらいの混み具合なんですか?

牧野さん 日によりますよ。他のお店や「小高交流センター」に入る飲食店の定休日には、お客さんは増えますね。

昭二さん なるほど。わたしたちは「絶対に○○屋」をやりたいというこだわりがあるわけではないんです。地域の方に選んでもらえるようなお店ができたらいいな、と思っていて。それで「お役に立てれば」という気持ちです。

飲食業界に入ったのは「ものづくりが好きで、自分の性格と仕事がマッチしたから」と昭二さん

澄江さん 南相馬市の外食文化や雰囲気は、どんな感じでしょうか?

牧野さん ラーメンと比べると、うどんのお店は少ないかもしれないね。

小南さん そうですね。最近の小高区では、店主がサウジアラビアで働いていた経験を活かしてサウジアラビア風のサラダ専門店「2-20」や、週末だけ開店する「ぷくぷく醸造の角打ち」など、個性のある飲食店が増えてきています。

牧野さん そうなんだよね、わたしも行ってみたいお店がいろいろあります。

河西さんご夫妻からは、飲食店のオープンや小高区での暮らしに向けてさまざまな質問が飛び交い、牧野さんはその質問に細やかに答えていました。

働き方と、暮らし方。
どちらの理想も叶える移住を。

これまで、関東・東京での暮らしを続けてきた河西さんご夫妻。移住と飲食店の開業を目指すことにしたのには、どんなきっかけがあったのでしょうか?

——いま、移住先は検討中なんですよね。

澄江さん そうですね、福島でいろんな地域を見てまわっています。数カ月前にはいわき市にも行きました。「将来的に移住したいよね」という話は、以前からしていて。

昭二さん いまが、自分の年齢やタイミングがちょうどよかったのだとも思います。コロナによっていま勤めている会社の経営方針や、「飲食業のスタイル」がどんどん変化していると感じていて。そうした時に、自分のやりたいスタイルを実践したいと思いました。

——先程おっしゃっていた、「地域の方に選ばれるお店」ということですね。

澄江さん コロナを境に、移住はリタイア後だけではなくて、若い年代でも結構増えてきていると感じたことも、きっかけになりましたね。

移住先では、畑で野菜の栽培もしたいと語る澄江さん。「その野菜を開店するお店で使えたら」

——移住先の候補地を、福島・浜通り地域に絞ったきっかけはなんだったのでしょうか?

澄江さん 私が、とにかく暑いところが嫌いで(笑)。都会の“嫌な暑さ”がないところで暮らしたいと考えていました。なので、関東以北でかつ、関東圏との距離が遠すぎないエリアがいいなと思って。

昭二さんは東京都、澄江さんは埼玉県のご出身。お二人とも地元関東との距離感を大切にしています

——暮らす場所の気候って重要ですよね。気候と、関東との距離感が決め手になっているんですね。

昭二さん 数時間で関東に着けるので、浜通り地域はちょうどいい距離感だなと思っています。

おだかぐらしの温度感を知り、
さらにつづく、移住先探し。

——今日、お二人に密着させていただきましたが、実際に牧野さんと話したり、まちあるきをしてみて、いかがだったでしょうか?

澄江さん もちろん事前にいろいろ調べてはいたんですが、調べるのと実際歩くのとでは、やっぱり印象が全然違いましたね。まちの雰囲気も知れましたし、意外と家があるなとか、どのくらい人がいるのかなとか。

牧野さん そうですよね、気になりますよね。

昭二さん ネットで収集できる情報って、実際に来てみてわかることの半分以下だったりすると感じています。現に、小高区で飲食店をされている牧野さんとのこういった「場」を設けてもらって会話ができる。いろんな方と出会える。それは大きな要素だと思いますね。

お客さんの数や宴会の受注件数等、飲食店経営の実践的なアドバイスをする牧野さん

牧野さん こうして、「飲食をやりたい」と明確な希望を持った方が小高区に来てくださるのは、活気が出るしもちろん応援したいです。とてもウェルカムです。

——行政区長を務める牧野さんとしても、地域に移住者の方が増えるのは良い変化ですよね。

牧野さん そうですね。あとは、自分のペースで構わないから、地域のイベントや行政区の活動にも参加してもらえたらありがたいですね。どんな人が地域にいるのか、お互いにわかっている状態がよいと思います。

昭二さん いま暮らしている都内は、地域内の関係って薄くて一緒になにかをやることって、まずない。ドライですね。

澄江さん なので、もしも小高区や他の地域に移住したときには、そういった地域のイベントなどにも、できる限り参加したいなと思っています。

牧野さん この地域の場合は、なにかを「強制」する空気はないから、それぞれが心地よい度合いでオープンでいられればいいと思います。

お店のことだけではなく、小高区での暮らしについてもさまざまな質問が飛び交います

——最後になりますが、今回地域のお世話人制度を利用してみて、いかがだったでしょうか?

昭二さん 実際に小高区のみなさんとお話をしたり、つながりができたり、ありがたい機会でした。移住先の地域と、自分たちがやりたい飲食店のスタイルを検討するうえで、とても参考になりましたね。

牧野さん 応援しています!

——みなさん、今日は1日ありがとうございました。

理想の暮らしと仕事を求めて、さまざまな地域を訪れ、検討を重ねる河西さんご夫妻。移住を検討すると、次々と疑問や不安、チェックポイントが出てくると思います。それらを一つひとつ丁寧に確かめてみることはとても重要ですが、移住を検討する当事者だけではなかなか難しいものです。そんな移住検討者や移住して間もない住民の方の支えとなるのが「地域のお世話人制度」です。小高区への移住に興味を持っていただいた際には、ぜひこの制度を活用してみてはいかがでしょうか?

「地域のお世話人制度」の利用の流れとしては、まずは申し込み時に、現地で知りたいことや、やってみたいことなどを南相馬市や小高区の移住相談窓口の担当者に伝えます。その内容に応じて、担当者がお世話人の中から要望に応えられそうな人にお声がけをし、相談者とマッチングする仕組みです。「なんとなく小高区というまちを知りたい」という漠然とした希望でも、もちろん構いません。ぜひお気軽にお申し込みください。

■「地域のお世話人」問い合わせフォーム:

https://www.city.minamisoma.lg.jp/portal/sections/21/2110/odaka_gurashi/chiikinoosewanin/24000.html