ゆる~く、行き当たりばったり。
「フツーの小高」を、まちぶらしてみた。
さまざまな人やパワーが集まり、日々魅力的な場所になっていく小高区。「おだかる」では、そんな地域の様子をお伝えするために、これまでたくさんの方の小高での暮らしぶりや想いを紹介してきました。かといって、小高区は特別な想いや熱意がある方たちだけが暮らしているまち、というわけでは、もちろんありません。
たまには、もっと「ありのままの小高」の様子をお届けできないか。そう考えて今回、ノープランでまちあるきを敢行!この記事を読んだら小高に1日暮らしてみた気持ちになること間違いなし!…とは、言い切れませんが、特別な行事や出来事などがない、小高区の“フツーの1日”を、ぜひ覗いてみてください。
10:00 まちあるき開始。
駅前広場に集う人々。
取材を行ったのは、2025年9月上旬の土曜日。浜通り地域らしいカラっと晴れた気持ちの良い天気で、残暑が厳しい1日になりそうです。JR小高駅の正面口から出ると、小高駅前から西にのびる通りをまっすぐに見渡すことができました。遠くには、福島県内の中通り地域に続く山々がそびえ立っています。

そんな中、小高駅前で自転車を組み立てるひとりの男性の姿が。“第1おだかるぴーぷる”発見、早速話しかけてみました。
——おはようございます。もしかして、さっきの電車で小高駅に到着されたんですか?少々お話を伺えるとありがたいのですが…。
男性 はい、自転車の準備をしながらでよければ。

——ありがとうございます。お名前を伺っても大丈夫ですか?また、今日はどちらからいらっしゃったのでしょうか?
佐伯さん 佐伯(さえき)と申します。仙台から電車に乗って、小高区には初めて来ました。
——自転車はご趣味ですか?
佐伯さん そうです。健康のために、ここ1年くらいで始めました。ひとりで道の駅巡りなどもしています。爽快感と、景色が自分のペースで流れていくのが好きですね。
——ひとり旅、とてもいいリフレッシュになりそうですね!前から計画していた旅なのでしょうか?
佐伯さん いえいえ、昨日思い立って。デイキャンプもできたらと思っています。熊には要注意ですけどね(笑)。
仙台市から小高区までは、電車を乗り継いで1時間半ほど。意外と気軽に来れてしまう距離で、 小高区から仙台市に電車で通勤通学している人もいるそうです。
——なぜ、今日は小高駅で電車を降りたのですか?
佐伯さん 浪江の方を目指して、国道6号を進む計画で。福島県内の道の駅を周るつもりなのですが、電車でこの辺りまで来られると便利だったので。
——そうだったんですね。突然話しかけてしまったところ、お話を聞かせていただきありがとうございました!浜通りのサイクリング、楽しんでください!

小高駅を後にする佐伯さんを見送ると「なにしてるの?」と声をかけられました。

——行政区長の志賀さん!おはようございます!実はちょっとまちあるきをしていて。志賀さんはなにをされているのでしょうか…?
志賀さん 今日は、みんなで集まって駅前広場の草刈清掃。
行政区のみんなと一緒に、草刈りやまちの環境美化を自発的に行っているとおっしゃっていた志賀さん。偶然にも、その現場に立ち合うことができました。(※)
※おだかるでは、2024年に志賀さんにも登場いただいた行政区長さん達の座談会を取材しました。
https://odakaru.jp/%e8%a1%8c%e6%94%bf%e5%8c%ba%e9%95%b7%e3%81%a8%e7%a7%bb%e4%bd%8f%e8%80%85%e3%81%ae%e3%81%bf%e3%81%aa%e3%81%95%e3%82%93%e3%81%8c%e8%aa%9e%e3%82%8a%e5%90%88%e3%81%86%e3%80%82%e5%9c%b0%e5%9f%9f%e3%81%ae/
——みんなっていうのは?
志賀さん この地域の駅前周辺の人たち。いつも10人くらいに声をかけていて、今日は8人が参加してくれました。
——毎回志賀さんのお声がけで、みなさん集まるのでしょうか?
志賀さん もともと「愛護会」っていう地域の集まりがあってね。明日は児童公園の方の草刈りをする予定です。やっぱり、駅前は小高の玄関口だからできるだけキレイにしておこうと思って活動しているんだけどね。
この活動は「キレイにしたい」という意識がある人が、ほとんど自発的に集まって行っているものとのこと。そのモチベーションを伺うと…
志賀さん 小高に来てくれた方に、駅から出た時に「キレイでいい感じだな」と思ってもらえたら嬉しいじゃない。あとは、自分たちが生活していて気持ちがいいように。今日集まったメンバーともいい汗をかいて、一日一善できたね、と。
——そんな志賀さんにお聞きしたいのですが、最近小高区で暮らしている中で嬉しかったことなどはありますか?
志賀さん そういえば…。この間、移住してきた方とも一緒に納涼会を開催して。みんなで焼肉や手作りの射的ゲームなんかを楽しんでいたんだけど、途中で雨が降ってきてしまったんです。
——せっかくのイベントが。中止になってしまったのですか?
志賀さん それが、みなさんそれぞれ自分のテントを持ってきて建ててくれたんですよ。それって、「共助」というか。こういう行動が自然にできるって、万が一、災害などの時にも絶対活かせる“コミュニティ力”だなって思ったんだよね。どう?良いこと言ったでしょう?(笑)
——もう、バッチリです(笑)!それぞれの方が自然とそんな行動をとれる雰囲気のある地域って、心強いですね。

——作業の最中に、お話を聞かせてくださってありがとうございました!どうか、熱中症にお気をつけて!
志賀さんと別れ、駅前通りを小高交流センターの方向に向かって進みます。この時間、まちなかには人の姿はありませんが、野菜の直売所「小高マルシェ」や遊び場がある交流センターに行ったらきっと誰かいるはずです…!
ところで、小高駅の駅前通りは「ふんどし通り」と呼ばれることがあるようです。その由来は、所説あるそうですが形がふんどしに似ているからとか。一体誰が言い始めたことなのでしょうか…?
12:00 出会いを求めて交流センターへ。
交流センターの前に来ると、ビンゴ!本日3人目のおだかるぴーぷるに遭遇できました。
——突然すみません。わたしたち「おだかる」の取材をしているのですが、少々お話を伺ってもよろしいですか?

続いて出会ったのは、小高区地域づくりインターンのために小高パイオニアヴィレッジに滞在している大学2年生の菅原さん。大学の夏休みを使って岩手県から小高区に来ているそうです。
——小高区には、どれくらい滞在しているんですか?
菅原さん 8月の半ばから、約1カ月です!友人に誘われて参加したインターンで、来週、成果報告会があるのでそれに向けて準備中です。
——成果報告会?
菅原さん 地域課題を見つけて、それについて調査し報告の発表をするんです。僕は、「地域の農業従事者をサポートする仕組み」について調べていて。今もちょうど、生産者さんにお話を伺えたらと思って「小高マルシェ」に向っていました。
——調査で忙しいかとは思いますが、小高区で過ごす時間はどうですか?
菅原さん 楽しいです。静かで、穏やかで、いいところだなって思います。僕が滞在している小高パイオニアヴィレッジでは同年代の子と3人で共同生活しているのですが、夜遅くまでみんなでおしゃべりしたり、散歩したりする時間が好きです。
——とっても青春ですね!そんな菅原さんは、将来やりたいことなどは決まっているんですか?
菅原さん まだ決まっていないです。なので、今回のようなインターンの機会にしっかりと自己理解を深めて、将来を探りたいと思っています。
——(ま、まじめ…!)菅原さん、ありがとうございました。小高区で過ごした時間が、将来の糧になりますように…!

その後、菅原さんの後を追うようにして、わたしたちも小高交流センターの中へ。すると、お子さんと広場で遊ぶ方や、小高マルシェで買い物をする方などで賑やか。交流センターに来てよかった!
早速、その場にいらっしゃった方に話しかけてみました。
——こんにちは。もしもお時間大丈夫であれば、少しお話を伺ってもよいですか?
安部さん はい、どうぞ。ここでいいの?うちに来るかい?(笑)

——とってもウェルカム…!そう言っていただいて、ありがとうございます。安部さんは、いまなにをされていたんですか?
安部さん 小高マルシェにうちで採れた野菜を持ってきたところだったんですよ。午前中に持ってきた野菜がもう売れてしまって、追加で。
——まだお昼をすぎたばかりですが、もう完売したんですか!
安部さん そう、週に4日間ここに来ていて、野菜と卵を卸していますね。うちで飼っている鶏から採れた卵は、黄身がこんもりしていて人気なんだよ。
——なにか特別な育て方をしているんですか?
安部さん 普通の飼料に、魚の“あら”と野菜を混ぜたエサにしているからかな。15羽くらい、平飼いしていてね。その卵も売り切れちゃった。
——ぜひ一度食べてみたいです。安部さんが小高マルシェに来ると、たくさんお知り合いの方に会うんじゃないですか?
安部さん そうですね、いろんな方と話すし「安部さんの顔見るとホッとする」なんて言われるから嬉しいですね。私は子ども好きなんだけど、子どもたちも「おばあちゃん」って寄ってきてくれるしね。
——そんな安部さんが、最近特に嬉しかった出来事はありますか?
安部さん いっぱいある(笑)。でも、一番ワクワクするのは、「演劇をやりたい」という気持ちが、また高まっていてね。
——-「また」と言うと、これまでにも演劇をされていたことがあるんですか?
安部さん 高校時代にやってました。先生から、東京で劇団に入ることを勧められて、卒業後に上京したんです。6畳一間のアパートで、4年間暮らしましたね。劇団員はアルバイトを掛け持ちするでしょ、当時私はデパートの店員もしていて。いろんなお客さんとお話ししましたね。
——へえ!自分の夢に向かって、突き進んでいたんですね。
安部さん そのあと、福島に帰ってきてからも、震災後に浜通りの復興状況を伝えるためのツーリズムガイドをしたり。今はこうして小高マルシェに来ていろんな人と話したり。そう考えると、「しゃべる生活」をしてきたね(笑)。

——近い将来、安部さんが演劇に出演される機会を楽しみにしています。お話聞かせていただいて、ありがとうございます。
安部さん はいありがとう。小高区の中でもできたらいいね。
安部さんと別れ、交流センターの中へ入ると、誰でも利用できるキッズスペースに今日も何組かの家族連れが来ています。まちなかに、子どもを心置きなく遊ばせられる場所があるのは嬉しいですよね。
13:30 再びまちなかへ。
若者2人と遭遇。
さて、交流センターを一周して再び外に。するとまた、通りに人影があったのでさっそく話しかけてみます。
——こんにちは!いま、少々お話よろしいですか?

鈴木さん・水口さん こんにちは!はい、大丈夫ですよ。
——ありがとうございます!お二人は、小高区にお住まいの方ですか?
水口さん いえ、今日は僕たちの大学の先生が、震災後の地域の様子をアーカイブする活動をしているので、それに同行して来ました!交流センターの中にある「殿様食堂」でランチをしたところです。から揚げと唐辛子の組み合わせ、最高でした。
小高区には、起業や地域おこしに興味を持った人が集まる小高パイオニアヴィレッジなどの拠点があり、大学の授業やインターンなどの取り組みで訪れる若者が多いことも特徴です。
——から揚げと唐辛子、美味しそう!唐辛子は小高の名産品ですね。ではお二人は、小高区には初めて来られたんですね。
鈴木さん 初めてです。来て”30分目”です(笑)。
水口さん まだこの通りしか歩いていないですが、なんだかお子さんが多いですね!食堂にもたくさんいましたし。
——たしかに、交流センターの周りは子どもたちで賑わっていますよね。普段は、大学でどんな内容を専攻しているのですか?
水口さん 僕は、地域の行政政策について学んでいます。専攻とは別に、農業や果樹産業がおもしろいと感じています。農園のお手伝いなどでも浜通り地域に来ることがあって、そこでいろんな方と出会うことができて。座学だけでは体験できないことを多く学べて楽しいです。
鈴木さん 震災で県外に避難した方と福島とのつながりを考える、ということを学んでいて。人と人、人と地域のつながりの保ち方や、今持っている記憶をどうやったら継承できるのか考えています。
——お二人とも、自分の興味と地域の現状をかけ合わせて、学びを深めているんですね。小高での滞在時間を楽しんでください。ありがとうございました。
鈴木さん・水口さん ありがとうございました!

そうして、お二人と別れて歩き出したのですが………


………誰とも出会わなくなってしまいました。
1日の中で一番暑い時間帯。買い物などの移動は車がメインになりがちな小高区では、これもまたリアルな景色のひとつだと思います。でも、決して寂しいわけではなく、どこかのんびりとした明るい空気が流れている小高区。せっかくなので小高神社の方まで、ゆったり散歩してみましょう。


降り注ぐように、セミの鳴き声がひびく小高神社の境内。野馬懸の時の賑わいが嘘のように、普段の小高神社は静かです。なんだか心が洗われるような厳かな雰囲気。この場所も、駅前から歩いて10分ほど。身近に気持ちのいい場所がたくさんあるのが小高区の魅力のひとつかもしれません。
15:30 旅のスタート地点、駅前広場へ。
タクシードライバーから見た小高区。
小高神社や気持ちのいい川辺を歩いて、再び出発地点の駅前広場に戻ってきました。時刻は15:30。駅前には、小高区にあるタクシー会社、富士タクシーさんが停まっています。運転手さんに話しかけてみたいと思います。(※)
※おだかるでは、2022年に富士タクシーさんを取材させていただきました
——こんにちは、いま、少々お時間よろしいですか?

菅原さん はい、大丈夫ですよ!運転手の菅原と申します。
——ありがとうございます。菅原さんは、タクシー運転手をしてもう長いんですか?
菅原さん 実は、富士タクシーの経営者が義理の兄なのですが、2021年に人員が必要とのことで会社に誘われて。そのタイミングで新潟県から移住しました。タクシー運転手を始めたのも、同じ時期です。
——そうなんですね。タクシー運転手をしていて楽しさや、やりがいを感じるのは、どんな時ですか?
菅原さん 「出会い」があることですね。タクシーの車内って、その日乗せたお客さんと完全に1:1で過ごす時間になって、そこでの会話によっては仲が深まったりすることもあって。そのまま、次に乗車する時も運転手として指名してもらうこともあるんです。
——菅原さんは、小高区に暮らし始めて4年ですよね。このまちの印象はどうですか?
菅原さん 天気が非常に良いのが僕にとっては最高ですね!過ごしやすい気候で。
——気候が良いと、気持ちも穏やかになりますよね。
菅原さん あとは、タクシーに乗せたお客さまからは「この地域がもっとこうなったらいいのに」という話を聞くことが多いのですが。
——「もっとお店が増えたらいいのに」というようなことですか?
菅原さん そうです。いろいろ要望はあると思うんですが、足りないと感じる部分は今の小高区の「良さ」でもあるんじゃないかと。電車が1時間に1本でも、その電車をゆっくり待つ時間も良いものです。僕はこのままの、ゆったりとした小高が好きです。

——小高区を客観的に見つめる目線と、地元で暮らす住民としての目線。どちらも持ちあわせた上で、素敵なお話をたくさん聞かせていただき、ありがとうございました。
菅原さん ありがとうございました!
菅原さんと別れたところで、時刻は16:00。そろそろまちあるきも終了の時間です。いかがでしたでしょうか?旅の途中に小高を訪れる人、まちの可能性に引き寄せられる人、自分の興味や学びを深める人、そしてこの地域での毎日を大切に想いながら暮らす人。今日、出会った方たちとのお話を通して、みなさんにもより「フツーの小高の雰囲気」を感じていただけたら嬉しいです。
さまざまな人が集う小高区には、暮らし方や働き方、人との関わり方など、自分らしいスタイルを“受け入れる空気”が、日々醸成されていっているのではないでしょうか。なにかに挑戦したい方はもちろん、そんな小高区の空気を感じてみたいという方も、ぜひ一度このまちを訪れてみてください。


