移住の決め手は、インスピレーション!?
カディッドさん一家の楽しい小高暮らし。
2024年の春、小高区に移住したカディッドさんファミリー。ご主人・ヘクセルさんの出身地であるフィリピンや神奈川県などで暮らしてきたご家族は、なぜ小高区を選んだのか?その理由やご家族の日常に迫ります。
家族4人。小高暮らしがはじまるまで。
小高区の静かな住宅街の中にある、カディッドさんのご自宅。約束の時間におじゃますると、奥さまの千晴さんが元気に迎えてくれました。部屋の中には、ご夫婦と2人のお子さんの姿が。
——おじゃまします、今日はどうぞよろしくお願いします。
ヘクセルさん・千晴さん よろしくお願いします。
——早速ですが、みなさんそれぞれの自己紹介をお願いできますか?
ヘクセルさん カディッドヘクセルと申します。“I’m from Philippines.” 今は、南相馬市の原町区にある2つの学校で、ALT(※)として働いています。
※ALT…Assistant Language Teacher(アシスタント・ランゲージ・ティーチャー) 。「外国語指導助手」として、小中学校などで日本人教員をサポートしながら英語の授業を行う役割の先生のこと。
千晴さん カディッド千晴と申します。私も同じく原町区で、「放課後等デイサービス」の支援員として子どもたちをサポートする仕事をしています。

——千晴さんがお勤めになっている「放課後等デイサービス」とは、具体的にはどんな場所なのですか?
千晴さん 小学生から高校生までが、学校以外の時間を過ごすところです。ハンディキャップがあったり、人とのコミュニケーションが難しかったりする場合に、遊びを通して社会生活に必要なことを学んでいくような場所です。
続いて自己紹介をしてくれたのは…
桐乙さん 僕の名前はカディッド桐乙(きりと)です!

現在、小高小学校2年生の桐乙さん。初対面の私たちにも、明るく話しかけてくれます。

香澄さん:わたしの名前はカディッド香澄(かずみ)です。
香澄さんは、おだか認定こども園の年長クラス。お二人とも、普段からとても仲のよい兄妹とのことです。4人で仲良く暮らすカディッドさん一家。そもそも、ヘクセルさんと千晴さんが最初に出会ってから、小高区での生活をスタートさせるまでにはどんな経緯があったのでしょうか。
千晴さん 私が、ボランティア活動をするためにフィリピンへ渡り、そこで出会いました。
——ボランティア活動、というと?
ヘクセルさん Food feeding. 食糧支援です。5~6年間活動していました。
千晴さん フィリピンの貧困が激しい地域で、食糧支援をしたり。あとは、移動図書館のように本を読める時間と空間を、子どもたちとその親御さんに用意したりとか。
フィリピンでも子どもたちの支援に携わっていたお二人。そして香澄さんが生まれるタイミングで日本に戻ってきたのだと言います。
千晴さん 最初は、私の地元の横浜に帰ってきました。ただ、子どもたち2人が大きくなってくると家が手狭になってきて。実家の近くは、居心地は良いのですが、そこで新しく家を買うのは、金額的に難しいと感じました。実は横浜に残りたい気持ちは、ほとんどなかったんです。

近年、社会的に移住が盛んになっている中、お二人はこれまで関わりのなかった地域を見てみることにも興味が湧き、首都圏での移住フェアなどにも足を運んでいたそうです。
千晴さん そうしているうちに、移住という選択肢が現実的に思えてきて。いろいろな地域を、夫が調べてくれました。
ヘクセルさん 北海道、長野、埼玉、鳥取も…たくさんの地域をチェックして。その中に南相馬がありました。
「ピンときた」理由は?
南相馬を知り、小高に出会う。
様々な地域が移住先の候補に上がっていた中で、なぜ南相馬市を選んだのでしょうか?
ヘクセルさん Inspiration! (笑)
——インスピレーション!この地域に、ピンときた!という感じでしょうか?例えば、横浜で不満に感じていたことはあったのでしょうか?
ヘクセルさん いえ、横浜はとっても良かったです。便利で、買い物も移動も、24時間困らないと思いますし。
千晴さん ただ、せわしないよね。
ヘクセルさん ストレスフルだと感じることはありましたね。でも、誰もそれを気にしない感じもしていて。
千晴さん 南相馬を最終的に選んだ理由は、やっぱりインスピレーションが一番大きいんですけど(笑)。やっぱり、移住支援が充実していたということも理由のひとつです。あとは、海があったことも。
——海の近くが移住先の条件だったのですか?
千晴さん 条件というよりは、気持ちの面ですね。太平洋で横浜とも、フィリピンとも、つながっている感覚が持てて。安心感がありましたね!
支援制度の充実と、地域の雰囲気。南相馬という地域を知っていく中で、総合的に評価して、次の暮らしのインスピレーションを得たカディッドさん一家。実際に、住まいや仕事を探す中で、具体的に利用した制度や移住決定までのフローも教えていただきました。
——南相馬に興味をもって、最初はどうしたんですか?
千晴さん 最初は、移住相談窓口「よりみち」(※)にお世話になりました。オンラインで繋いでもらって、南相馬には3つのエリア(小高区・原町区・鹿島区)があることなど、基本的な情報を教えていただきました。
- みなみそうま移住相談窓口 よりみち…https://minamisoma-yorimichi.jp/
——最初から、小高区だけに絞って移住先の地域を検討していたのですか?
千晴さん 最初は、子育て世代ということで、暮らしの利便性が高い原町区をおすすめされたんです。でも、実際に原町区を見てみたら、ほかの地域と同じように賑わっていて。私たちとしては、せっかく移住をするなら、原町区でなくてもいいと思ったんです。
南相馬市の中で、より落ち着いた環境を探していたという二人。そんな中、小高区の「お試しハウス」を滞在拠点としたことから、徐々に小高区に惹かれはじめたそうです。
——小高区のどのあたりに惹かれたのでしょうか?
千晴さん 移住前に4回くらい小高に滞在したんですが、地域を見て回る内に、静かで学校もあるし、日常の買い物にも困らない。「こっちの方がいいんじゃない?」って思うようになりました。
——4回とも、自分たちで地域を見て回ったのでしょうか?
千晴さん 2回目の滞在で、おだかぐらし体験ツアー(遊ぶ広報)(※)にもお世話になりました。地元の方に小高区の中を案内してもらい、より地域の雰囲気を知ることができました。
※遊ぶ広報…地域に数日間滞在し、その様子をSNSで発信すると滞在費が補助されるプログラム。地元のガイドが主催するアテンドツアーに参加したり、自由に地域を散策したりできるため、まちをより深く知ることができるパッケージ。
https://www.city.minamisoma.lg.jp/portal/sections/21/2110/odaka_gurashi/odakagurashi_taikentour/19529.html
ヘクセルさん その時に訪れた「NIKOパーク」(※)は、大きな決め手になりました!
※NIKOパーク…南相馬市小高区にある屋内の子どもの遊び場 https://minamisoma-playground.com/
——お子さんと遊べる場所や施設があることをポイントにされていたのですか?
ヘクセルさん そうですね。NIKOパークは利用料もフリーですし、特に良い所だと思います。
千晴さん 横浜にもそういう施設はあるんですがお金がかかりますし、子どもを連れていくのは人が多いと気が気じゃないんですよね。ほかにも、「小高交流センター」は過ごしやすいです。
ヘクセルさん 「小高マルシェ」(※)、大好きなんですよ。フィリピンには果物や野菜の市場がたくさんありますが、日本にはあまりないのでありがたいです。
※小高マルシェ…小高交流センター内の農産物等直売所。新鮮な野菜や地域の産品の売り場に、地元の生産者さんやお客さんが集う交流の場。過去には動画:「おだかるぴーぷる」でその魅力を取材しています https://youtu.be/rqGzeLwfXbY
千晴さん ほぼ毎週通っていますね、いつもお野菜を買っています。
——休日はどんな過ごし方をすることが多いですか?
ヘクセルさん 浜通りエリアで、いろいろな場所に出かけることが多いです。原町区に買い物に行ったり。浪江町の公園まで出かけたり。いわき市や、時々仙台市まで行くこともあります。
千晴さん この辺りは、小高区をはじめ、毎週末イベントが多いですね。「おだかつながる市」だったり、浦尻貝塚での化石の発掘だったり。そういった地域のイベントにはよく参加しますね。あとは、原町区で日用品をまとめ買いしたりとか。

移住を決意。
まずは、仕事と住まい探しから。
移住前に何度も小高を訪れて、移住を決意したヘクセルさんと千晴さん。お二人の現在の仕事や住宅などはどうやって見つけたのでしょうか?
ヘクセルさん 私はもともと、外国語の指導員を派遣する会社で、関東支社に所属していました。そこから転勤という形で、南相馬市内で働いています。
——ALTとしてのお仕事のやりがいは、どんな部分にありますか?
ヘクセルさん 英語を使うことで、自分の経験や知識を子どもたちにシェアできるところです。

——千晴さんは、どういった経緯で現在の放課後等デイサービスの指導員になったのでしょうか?
千晴さん もともと横浜では親子教室の講師をしていましたが、このエリアで同じ職業を続けることは難しかったので、移住に伴って転職活動をしました。
——職探しは、インターネットなどでご自身で行いましたか?
千晴さん そうです。小学校教員・幼稚園教諭の免許を持っていたので、それを活かせる職種を探していたら、ちょうど現在の職場が人員を募集していることを知って。
——移住前、どのくらいのタイミングで転職活動をしていたのですか?
千晴さん 移住を2024年3月に計画していたのですが、2023年11月に現職に応募しました。オンライン面接を受けて採用していただき、仕事が決まったことで、住まいや移住の手続きなども一気に進めることができました。
——現在のお仕事のやりがいはどんなところでしょうか?
千晴さん 初めて挑戦する職種ですが、自分も子育てをする上で必要なことを一緒に学ばせてもらっている感覚があります。子どもたちが純粋で関わっていて楽しいですし、成長が見える瞬間はとても嬉しいですね。

——移住に際して、職探しはまずは重要な要素ですよね。お住まいはどのように探されたのですか?
ヘクセルさん 「ミライエ」(※)に紹介してもらいました。
※空き家と住まいの相談窓口 ミライエ https://www.minamisoma-akiya.org/
千晴さん 今暮らしている一軒家は、空き家情報としてミライエから教えてもらって、2025年の10月に引っ越しが終わったばかりです。
小高だけのSense of Community(共同体意識)。
そうして、様々な準備を重ねて実現したカディッドさん一家の小高暮らし。実際に暮らす中で実感する「小高の良さ」があるかも伺いました。
ヘクセルさん “Sense of Community”が、あるところかな。
——Sense of Community、もう少し具体的に教えていただけますか?
千晴さん 「共同体意識」という言葉が当てはまるかもしれないですね。たとえば、横浜はいつも人がいっぱいで、公園でもバスでも、子どもを連れていると親は周囲にとても気を遣います。
——どこかに行ってしまわないか、とか、だれかにケガをさせてしまわないか、とかでしょうか?
千晴さん はい。でもここ小高は特に、子どもが自由にしていても、邪険にされないし、親と子が良い距離感でいられる場所だと思います。それは、周りの地域の方たちが、子どもを一緒に見守ってくれたり、声をかけてくれたりする空気感があるからです。
——周囲の方の意識や姿勢。
ヘクセルさん 横浜では感じなかったけれど、南相馬市、特に小高区では感じる感覚ですね。別の家族同士がお互いにサポートしあっているような。
千晴さん そういった「共同体意識」が根付いていることが、小高区の暮らしやすさの理由なのだと思います。
——現在、地域の方たちとはどんな関係性を築けていますか?
千晴さん 大人同士というより、子どもたちがすぐ馴染んでしまうので、それをきっかけに顔を合わせる方たちが増えてきました。

軌道に乗りはじめた小高暮らし、
これからの楽しみは?
仕事や住宅など暮らしの環境を整え、小高区での家族4人の生活を営むカディッドさん一家が、これからの小高暮らしで実現させていきたいことや、展望についても伺いました。
——今後小高でチャレンジしていきたいと思うことはありますか?
千晴さん 夫は、農業にも関心があるんです。
ヘクセルさん 若い時、フィリピンでも大きな庭を管理していたことがあって。日本では、農家さんたちが高齢化しているので、その代わりに農作業を手伝ったりできればいいなと思っています。
ヘクセルさんは、2025年の春に『地域のお世話人制度』(※)を利用して小高区内の農場で、農作業のサポートも経験したそうです。
※地域のお世話人制度…小高区で暮らす・働く「地域のお世話人」の方たちが、小高区に移住を検討している方や、すでに移住をされた方の移住前後の不安や疑問などに応えてくれる仕組み。
https://www.city.minamisoma.lg.jp/portal/sections/21/2110/odaka_gurashi/chiikinoosewanin/15746.html
千晴さん 小高区には、「小高パイオニアヴィレッジ」があったり、起業家の方も多かったりするので、新しいことにも前向きにオープンに取り組めますよね。自分のやりたいことを思い描くには、とてもいい地域だと感じています。
ヘクセルさん 将来は英語を使いながら、また、農業にも取り組みながら、自分のやりたいことを複数掛け持ちするようなビジネスをはじめられたらと思います。

——暮らしている中で、もう少しこう変わったらいいな、と思うところはありますか?
千晴さん そうですね…。ドラッグストアというか、医薬品がもっと手軽に手に入るところがあると嬉しいなとは思います。子どもが小さいと、どうしても急に必要になることがありますからね。
ヘクセルさん それは、新しいビジネスになるかもね!(笑)

——いろいろなお話を聞かせていただいて、ありがとうございました。みなさんの小高暮らしの様子は、小高区に興味がある方や、移住を検討している方にとって、とても参考になると思います!
ヘクセルさん・千晴さん ありがとうございました。
インスピレーションを大切に移住し、より良い暮らしを小高区で築くカディッドさんファミリー。のびのびと過ごす桐乙さん、香澄さんの姿は暮らしの心地よさを表しているようでした。
これから移住を検討する方や小高区への興味がある方は、カディッドさん一家の移住までの流れを、ひとつのモデルケースとして参考にされてみてはいかがでしょうか。
インタビューの中でも登場した「遊ぶ広報」や「ミライエ」、「地域のお世話人制度」など、南相馬市では様々な移住支援制度で、あなたの小高暮らしのスタートを応援します。


